ワークキャンプの初日の夜。
30人ほどの参加者が集まり、最初に行われたのは「自己紹介タイム」でした。
とはいえ、よくある形式的なものではなく、テーマは——
「なぜ、あなたはこのワークキャンプに参加したのか?」
参加者は、座った順番で順に話していきました。
最初のうちは「大学のサークルで悩んで…」「ちょっと気分転換に来てみました」など、わりと当たり障りのない“無難な自己紹介”が続いていました。
でも、何人かは全然ちがった
中盤になって、雰囲気がガラッと変わりました。
過去にもこのキャンプに参加したことがある“常連メンバー”が話し始めたのです。その内容はとても深く、正直なものでした。
「高校で不登校になって…」
「仕事のストレスで休職して…」
「生きてる意味がわからなくなってしまって…」
誰もが、自分の過去や心の奥にある感情を、静かに、でもはっきりと語っていました。
そして何より驚いたのは、それを聞いている周囲の反応。
誰も否定しない。驚かない。変な顔もしない。
ただ、当たり前のように「うん」と頷きながら、最後まで話を聞いているのです。
「ここなら、全部話してもいいのかもしれない」
その光景を見て、私は強く思いました。
「この場所なら、全部話しても大丈夫かもしれない」
ずっと誰にも言えなかったこと、話したくても言葉にできなかったこと。ここでなら、話しても受け止めてもらえるかもしれない。
そう思ったとき、怖さと安心が一緒にやってきました。
そして、私の順番が来た
私は、できる限りの正直さで、自分のことを話しました。
・現在引きこもりをしていて、学校へ行けていないこと
・発達障害と精神疾患を抱えていること
・ずっと“優等生”として生きてきたけど、人との関わりがとにかく苦しかったこと
・それなのに、漫画やアニメの「仲間」や「友情」にものすごく惹かれていること
このときの私は、それを“ただ好きな作品”だと思っていました。
「この漫画、面白いな」「こういう関係性にグッとくるな」——ただそれだけの感覚だったのです。
※この「好き」に秘められた意味を、後日ある人との対話を通して深く考えることになります。
それは、私の自己理解を大きく進めてくれるものでした。(このお話は、次回お届けします。)
ただ、聞いてくれた。それだけなのに
自己紹介のあと、会場は少し静かになって、誰かが拍手してくれました。
その拍手が広がって、あたたかな空気に包まれました。
誰も否定しない。何も詮索しない。ただ、「聞いてくれた」。
それだけなのに、私は心がとても軽くなっていることに気づきました。
「話してよかった」
「ここに来てよかった」
少しだけ、自分を肯定してもいいかもしれない。そんな気持ちが、初めて芽生えた瞬間でした。
本音で話せる場が、こんなにも力を持っているなんて
この体験は、私にとって最初の「小さな変化」でした。
“安全な場所”で、“本音を話してもいい”と実感できたこと。
それが、これから始まる一週間のすべての土台になったように思います。
言葉にすることで、自分でも気づいていなかった「本当の自分」が顔を出す。
それは、とてもあたたかくて、静かで、大切な体験でした。
次回予告
第3回:言葉にすると、自分が見えてきた
——キャンプ中に何度も設けられた“1対1の対話の時間”。
そのひとつひとつが、私の考えを整理し、自分を深く知る手助けになっていきました。
そして「友情」への憧れに隠れていた、私の本音にも気づくことになります。
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